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中国

キッシンジャー回想録 中国(上)


中国は1959年ー1962年において、2000万人が飢餓で亡くなった。


「大躍進」政策の失敗である。
私有財産を無くし、人民公社に集約した結果、生産性を失ったためだ。
中央から地方への締め付けは厳しかったが、地方から中央への報告書は虚偽に溢れていた。
農業生産は計画に追いついていなかったが、水増しが常態化されていた。
鉄の生産が追いつかないときには、有用な機具がためらいなく高炉に放り込まれた。
中央はその虚偽の報告に気付かず、ソ連をはじめ周辺各国に強気に対処できると考えていた。


文化大革命」の目的は、官僚組織をつぶすことにあった。
しかし、国内の大混乱を招き、再教育の名の下に外交官をはじめとした知識階級が農村に送り込まれ、教師は文字を読めない農民だった。
各国から外交官が引き上げられたことにより国際社会における中国の孤立は深まった。

●memo 文化大革命の内実
1965年に毛沢東が自らの復権などを目的に始め、以後約10年間続いた権力闘争。
紅衛兵と呼ばれる毛沢東の私兵が思想統制、拷問、つるし上げ、暴行、恐喝、財産没収、糾弾、時には殺人などを行い、徹底的な毛沢東への個人崇拝を強制していった。
階級闘争が叫ばれ、人々は出身階級ごとに色分けされ、出身階級が良いもの(紅五類)が悪いもの(黒五類)を一方的に迫害し、弾圧するということが正当化された。ーはてなキーワード

中国はロシアをはじめ四方八方に領土問題を持つ他民族国家でバランス上一切の妥協ができない。
ただし、キッシンジャーの回顧によれば、中国は言葉は強気だが行動は意外と慎重だった。
例えば、インドとチベットを巡り衝突した際には、一度は前線を中国が主張する国境ラインまで侵攻させたのち、居座る事無く退去し、その後は領土問題について棚上げとされている。
さらに、毛沢東や主恩来の米国との交渉には、一言一言に深い含意を潜ませ、弱気だと受止められることを一番嫌った。
交渉のパートナーには、外面的にはお互いの利益を主張し合いながら、裏で手を結び合う「戦闘的共存」が出来るかどうか見極めようとした。


米国はニクソン大統領が1972年2月に訪中した。中国はソ連からの脅威に対抗するため米国を選んだ。米国はベトナム戦争の打開のため中国との関係を模索した。両者の利害関係は一致していたが、その経緯までには「どちらが先に会談を申し出たか」というメンツの問題に多く時間が割かれた。
また、台湾に関しては「一つの中国」を巡り北京と台北のどちらが正式な中国なのかという点を巡り、この問題は棚上げされた。
米国は、台湾と国交を結んでおり、米国の出した声明は「一つの中国に向かう意思を米国は承認する」とどちらの味方でもなく、かつ具体的な支援に道がつながる表現がとられた。


本書「On China」から見えてくるのは、戦略的共存を外交手法とし、敵同士を競い合わせることで勢力均衡を図る中国。外交における発言の一つ一つに重きを置く中国。


この意味で言うと、私が思うに、先日のAPECでは、胡錦濤野田首相の真意をさぐるような、真剣な面持ちで対面しているのに対して、野田首相は、仏頂面で、たぶん結局何にも言ってないような返答をしていたように見えた。おそらく胡錦濤はこの立ち話で野田首相にバツを付けた。
中国は尖閣諸島を巡り強気な姿勢で来るだろう、しかし、軍事には訴えず経済制裁などのアプローチや、領海侵犯や国際社会への喧伝などの示威行為を繰り返すのだろう。
中国の一方的な主張に付き合う必要はなく、中国の顔を立てる必要も全然ないが、実際に経済面で中国に進出した日本企業の操業度が下がっている実害があり、デモによる物損もある。日本はスジを通す冷静な対処をとるのもいいが、中国の歴史的な外交手法の逆手をとってソ連、インド、台湾との関係強化により外堀を埋めるなどの圧力は中国に対しては効果的なのではないかと考える。
さらには、尖閣諸島で中国が強気な姿勢を示すほどに日米同盟が深まるジレンマを中国は知ってるはずであり、そこに打開策がある。
戦略的互恵により今後10年くらいかけてもよいから、お互いが領土を主張する地域の利用が「棚上げ」されている不自然で合理的でない事態を正常化するため、領土問題はさておき、日中台企業による石油開発などに歩を進めて欲しいものだ。


下巻に続く。


●memo 他民族国家
中国は漢族と55の少数民族から構成される。漢族は全人口の 92%を占め,少数民族人口 は約1億人で,中国全人口の 8%。ただし,少数民族の分布地域は中国の総面積の 64 %以上 に及んでいます。ー 立命館言語文化研究18巻3号 郭潔敏 http://t.co/XAh5IskT


中国人民元紙幣は、漢字のほか、4言語(モンゴル語ウイグル語、チベット語チワン語)で書かれる。