I me Mine

根暗なマイハートのネジを巻け!

葉隠その10


意見をしてその人の欠点を直す、ということは大切なことであり、慈悲心とも言い換えられる。それは、ご奉公の第一の要件である。
ただ、意見の仕方に骨を折る必要がある。他人のやっている事に対して善悪を探し出すということはやさしいことで、また、それについて批判することもたやすい。
おおかたの人は人の言いにくいことを言ってやるのが親切のように思い、それが受け入れられなければ、力が足りなかったとしているようだ。
こうしたやり方はただいたずらに人に恥をかかせ、悪口をいうだけのことと同じ結果になってしまう。言ってみれば気晴らしのたぐいだ。


意見というのは、まず、その人がそれを受け入れるか否かをよく見分け、相手と親しくなり、こちらのいうことを、いつも信用するような状態にしむけるところから始めなければならない。
そのうえで趣味の方面などから入って、言い方なども工夫し、時節を考え、あるいは手紙などで、あるいは帰りがけなどに、自分の失敗を話しだしたりして、余計なことは言わなくても思い当たるようにしむけるのがよい
まずは、よいところをほめたて、気分を引き立てるように心をくだいて、のどが渇いたときに水が飲みたくなるように考えさせ、そうしたうえで欠点を直して行く、というのが意見というものである。
意見というのはことのほかしにくいものといえる。


以上、葉隠より。
現代のコーチング理論に通じることを江戸中期に言っていますな。