IN LOVE AGAIN

IN LOVE AGAIN (DVD付)

10月15日に発売された古内東子の新譜が、2008年10月第4週の邦楽アルバムランキングで、織田裕二のベストアルバムを押えて堂々の15位になった。

待ちに待ったニューアルバムは、ヒット曲『誰より好きなのに』と、アルバム収録作『帰る場所はあなた』の映像特典付き。
さらに、綾瀬はるかが出演する「パンテーン」ＣＭソング♪Beautiful Days『CASHMERE MUSIC』を収録。

このように現時点でのベストをつくしたリリースは、古内東子を多くの人に知ってもらいたいファンの１人として評価できる。*1

しかし、期待に反して今週のランキングでは、『らき☆すた』のサントラよりは上だったが、31位まで落ちてしまった。

プロモーションでＴＶ出演するなど力を入れていたのに少し残念だ。これは世界同時株安と同様に由々しき事態。でも、今週はラジオ出演など回数をこなしているので、株価と同様に回復を願おうと思う。

さて、ニューアルバムの感想。
アルバムジャケットの雰囲気かもしれないが、比較的太い感じの音づくりでなんとなく1999年発売の『winter star』以降３作の感じに近いと思った。でも、それ以降のアルバムにみられた素軽い感じの曲も入っている。
誰がプロデュースしたのかと思って、歌詞カードの巻末にある小さな文字をみると「河野伸」の名前があった。

彼は、2004年発売『フツウのこと』で３曲手がけている。

フツウのこと

これは面白い。
この２つのアルバムは第一感、正反対にみえるからだ。これらの相違点と類似点は、ニューアルバムを理解するヒントになるかもしれない。
まず、ジャケットから。
ニューアルバム『IN LOVE AGAIN』のジャケット、全然フツウじゃない。香水のビンの中に古内東子が入っている。
AVEXは、古内東子をデラックス＋セクシー路線でブランディングしたいのかもしれない。
一方『フツウのこと』の方は、スッピンに近い古内東子のフツウの姿が映っている。
なお、1999年の『winter star』以降のアルバムジャケットは以下のとおり。

ニューアルバムの曲や歌詞には統一性がある。

曲は、ＡＯＲ風な曲調やしっとりしたバラードで統一されている。
『フツウのこと』に収められた♪STAYのような熱いバラードや、♪サヨナラアイシテタヒトのような歌謡曲的なメロディはない。

歌詞は、『IN LOVE AGAIN』のタイトル通り、失恋と次の恋の間で漂う女性心理が描かれ、その世界は”昔の彼氏への未練””一歩踏み出せない”など複雑。
『フツウのこと』に入っている♪スーパーマンや♪weak pointのように、シンプルな恋心の高ぶりは描かれていない。

『IN LOVE AGAIN』で光っているは、

• ♪あなたのトモダチ
• ♪帰る場所はあなた
• ♪半分だけ

♪あなたのトモダチ
　突き抜けた感のある軽快な曲。「元彼の友達を好きになってキスする５秒前」という歌詞は男目線からみると微妙。男心は繊細なのだ。

♪帰る場所はあなた
　このようなメロディが書けるのが古内東子の非凡なところだ。♪Beautiful Daysもそうだ。

♪半分だけ
　詩に共感した。

何冊も読んだ小説　何回も見た映画　たくさんの言葉を深く心に刻んできたはずなのに　まだ選べない　あなたに届けたいメッセージ

泣きたくなる　このままきっと私は平気な顔をして「またね」って　あなたより先に背を向けるのだろう

好きなのに、伝えることができないで、先に背を向けてしまうという心理を自分に重ねてしまった。やはり臆病なのだろうか。

しかし、直接的な言葉がなくても心の”熱”は伝わる。
例えば、木村拓哉主演ドラマ『HERO』の最終回で、松たかこ（雨宮舞子）が木村拓哉（久利生公平）に、カメルーンのサッカー代表選手全員の名前を暗記して答えるシーンは、「好き」とは言っていないけれど、言葉は「エムボマ」とかだけれど、愛の告白そのものだ。
例えば、福山雅治主演ドラマ『ガリレオ』の最終回で、福山雅治（湯川学）が、柴崎コウ（内海薫）が捕われた起爆装置を命がけで解除するのも、胸を打つ名ゼリフ以上に愛情を雄弁に語っていると思う。
例えば、渥美清主演映画『男はつらいよ』シリーズで、渥美清（車寅次郎）がヒロインに結局手を出さないのも同じ。

でも今思った。いくら間接的に愛情が伝わったとしても、関係を深めるには直接的なアプローチが不可欠だということを。
間接証拠だけでは、恋愛は成就しないことを。

それはさておき、古内東子の新譜に登場した女性達の恋愛が成就することを祈ります。
『IN LOVE AGAIN』はそんな作品です。

*1:どうせなら♪Xmas present『Dark ocean』の弾き語り映像も特典してくれるとよかったなあ。