不景気だと困るのは要するに貨幣経済に依存し、お金がないと衣食住が直ちに成り立たなくなる生活だからだ。その意味では、土地を持っていると強い。つまり自給自足ができる。
実際、戦後の物価高騰時に農家は食物を高く都市住民に売って一財産つくった。だが、今は違う。なぜか。
国家が破綻し、水道、電気などインフラがストップした場合には、土地があっても作物を作れない。だから狭義の自給自足が成り立つのは自然の水を引いた田畑を持ち、自前で燃料を確保できる場合に限られるため。
しかし、農家に税金で所得補償をしているのは、有事の際に国民の糊口をしのぐためのはず。
国家の財政破綻、戦争など貨幣経済が崩れ都市住民が飢えて地方に逃げてきたとき、農家の人は法外なカネで食料を売りつけ(戦争後は実際そうだった)、都市住民は農作物を盗むという悲惨な将来を回避するため、有事の農地利用(一時国有化?)を決めておくべきではないか。都市に農業工場を作るのも手。
日本の農業を守る目的は、貿易が止まっても、食糧を国内でまかなえるアピールが外交上重要(食糧安全保障)だからだと思うけど、農作物の「種苗」の自給率はどのくらいか。現代農業の種苗は二世代目が成らないよう遺伝子操作されている。米国の巨大農業メーカーの存在が大きいが、種の自給自足が必須。
さらには、TPPと農業がセットで語られるが、農業といっても米、野菜、果樹など様々。
生鮮野菜は消費地に近い方が有利だし、果樹はもともと関税が低く、TPPの影響は米ほど大きくない。
そもそも、国内農家は米偏重が言われている。米は政府の保護があるうえ、比較的タフな作物で育て易い(と書くと文句が出そうだ)らしい。
兼業農家で、土地を高く売抜けるタイミングを待ち、事実上、耕作放棄している農家のために税金で所得補償するのは少し不満だが、有事の際に農地を残し、国民全体で利用するためのリスクヘッジとしてなら百歩譲って、農家への所得補償を税金で行うことをよしとしよう。
しかし、有事の際に農地を国有化するとか、国民の飢えをしのぐために公の利用に付すというのは私有財産制度に抵触するから現実的ではないし、作物だって毎月実がなるわけではなく、一年に一回だから、農地があれば飢えがしのげるといっても限界がある。
そう考えると、食糧安保は有事ためというより、継続的に国内農業を伝承していくことに意味があるわけであって、現在平均年齢が66歳とか言われる農家の先行きは難しい。
安易に土地を売る事は「田分け」といい、「たわけ者」の語源のとおり、愚かなこととされているらしい。
農業は、食糧安保というよりは、農家の財テク(土地)の意味が大きいと思ってる。
しかし、農業を継続できる体勢というものを考えて、法人の参入だとか、有効な土地利用を考えないと、関税を論ずる前に、農業が出来るノウハウをもつ人がいなくなってしまう。
ただし、もう少しして貨幣経済が行きずまると、日本人は堰を切ったように農地を求め、農家が増えるリスクシナリオもある。
原発に対する関心や見方が、福島原発の事故を境に大きく変わったように、農業に対する就労や参入意欲は、あるときを境に大きく潮目が変わる可能性がある。
そのときのために、農地を買って、農家になるのは、今でしょ。