県 | 求人倍率 | 出生率 | 有配偶者率 | 持家率 | 新築持家率 |
---|---|---|---|---|---|
青森 | 0.46 | 1.25 | 56.2 | 70.9 | 54.0 |
東京 | 1.41 | 0.98 | 45.0 | 44.8 | 11.2 |
愛知 | 1.91 | 1.30 | 55.9 | 58.7 | 34.2 |
宮崎 | 0.69 | 1.46 | 54.9 | 67.1 | 44.6 |
Av | 1.08 | 1.25 | 53.5 | 61.2 | 31.8 |
東京の1人勝ち、地方は厳しいという。
しかし、この表をみるかぎり、求人倍率は低くても東京より、青森県や宮崎県の方が、持ち家比率が高く、出生率も高い。
これからの日本がめざすのは、「青森県や宮崎県みたいな恵まれた生活」を、都会の人々に分けてもらうことだ。
これが逆格差だ。
だいたい仕事がないといいながら新築持ち家着工率の高さはなんだろうか。十分豊かではないか。想像するに、地方では都心マンションの80平米にみたないような持ち家ではなく、比較的広い一軒家に住んで、車の保有率も高いはずだ。車社会だから。
不景気で夜は街が真っ暗になるというが、逆にいえば夜仕事をしている人がいないということだ。労働時間が短いのはいいことだ。そして、持ち家で家族と生活できているならいいではないか。
都会の人は深夜まで働いてるよ。
子どもを2人以上生むと家が買えない。
小さい家に住んでいるよ。
地方は大変だという。
『下流社会』という本で、こういう人たちのデータが載っていた。
地方で暮らし、年収300万円で、子どもがいて、上流・中流の意識を持っている。
ちょっと記憶違いかもしれないが、年収300万あれば、子どもを産める水準の生活ができるんだなと思った。
都会のフリーターは、みんな地方に引っ越したほうがいい。
・・・あれ、なんか変だ。地方に仕事がないから、職を求めて都会に移ってくるのが現実だった。
ここらで冷静に分析する。
冒頭の表の適当な分析はこのようなものと考える。
- 農業中心のため、自給自足的生活をしていて、親世代が、失業中の子どもと家族親戚を食べさせている。だから、失業者が多くても餓死という結果にならない。
- 若い人が都会に出てしまって、高齢者しか残っていない。高齢者は高度成長時代に持ち家を買っているため、統計的に持ち家率が高く表れる。
- 同様に、未婚の若い人が都会に出てしまっていて、結婚している親世代が地方に残っているため、有配偶率は統計上高くなる。
- 地方は、結婚に対する社会的考えが、某柳沢厚生労働大臣的だから、婚姻・出産に対する動機付け、プレッシャーが大きく、有配偶率、出生率が都会より高くなる。
- 地方でも、公務員や一定規模の企業社員であれば都会と違わない収入があると考えられ、物価の安さからみて子どもを産む余裕がある。
- 土地、物価が安いので、家を建てやすい。おそらく1500万円あれば土地、建物取得が可能だと思う。だから、新築持ち家の割合も高い。公共事業で立ち退きを求められたり、立ち退き補償金による成金で、新たに家を求める人も多いのかもしれない。
こう考えると、
5.6に当てはまる人たちにとって地方は天国かもしれない。
深刻なのは、1〜3の現状である。
このまま、
・若い世代が、親世代の収入や資産に頼っている
・若い世代が、地方に残らない
・さらに、農業離れが進んでいる
・公共事業が先細りとなる、または談合廃止を名目に大手企業が地方の仕事を奪う。
・地方交付税交付金が見直され地方自治体の一層の自主努力が求められる。
・偽装請負的な経済的にも職業人としても自立できない就業形態が増える。
ような現状が進むと地方の将来は、不安だ。
物価・平均賃金が低いことを重ね合わせると、地方の消費購買力が少なく、世間でお金がまわっていない不活性な感じが想像できる。
ところで、談合批判があるが、地方の公共事業は地域に労働の機会を提供するために行う資源の再分配政策なのだから、談合によって公平に労働の機会が分配されることは目的にかなったことだ。
だから、入札制度を改めて談合を防止するのは、ある意味本末転倒なことなのだ。
細木数子もそのようなことを言っていた。
しかし、細木数子は、あえてここまで言わなかったが、談合の問題点は、その「配分が政治の力でゆがめられる」点にある。知事選で負けた陣営には一切仕事がまわらなくなるなどが例だ。
このように、地方の政治や社会をゆがめてしまい、結局、資源の適正な配分が行われないならば公共事業も適正な入札とし、談合はやめるべきといわざるをえない。
そうでなければ、官製談合を制度化するしか公共事業の目的を達成する手段はないと思う。
話がそれたが、いまや地方は、脱公共事業で活路を見出すことを始めている。
たとえば、http://www.japanway.or.jp/special/genki/genki2005-10
何をいいたいかというと、地方もフリーターも同じということ。
地方は公共事業の庇護から脱皮する。フリーターも親の支援から脱皮する点で共通。
しかし、地域活性化も、フリーターの正社員化も厳しい社会情勢にある。
だからこそ、活路を開くため創意工夫や、スキルアップの必要がある。
かなりハードルが高いのは共通であるが、そうでもしないと将来がつらい。
◆memo
- 作者: 高村薫
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青森を舞台に、政治による地域産業の漁業から建設業への構造転換、ついには核施設の誘致に賭ける地域再生の渇望が印象的。
一方、東京の現状について冒頭の表の理解はこうか?
- 求人も多いが、求職者の数も多いため求人倍率はそれほど高くならない。雇用のミスマッチもある。事務職は0.5倍くらい。製造業には5倍程度の職種もある。*1
- 女性の高学歴化、社会進出と出生率が下がる傾向があるという研究もあり、東京はその傾向が強い。
- 都会は、結婚・出産のプレッシャーが少ないうえ、価値観も多様であり、有配偶率と出生率が低くなる。
- 出生率の低さについて、都会は物価が高いので、サラリーマンは、子どもを2人産むと家を買えない。*2共稼ぎであれば金銭的に可能になるが、育児休業の取得や再就職が困難など労働環境の未整備によって産まないことを選択する者も多いと想像する。
- 不動産価格が高いことにより、持ち家比率は低くなる。マンションでも4000万円から5000万円、一軒家だとそれ以上という価格設定では東京都内での新規持ち家は難しい。埼玉や千葉での持ち家比率は64%で東京都内より20%も多く、東京近郊に住み都心で働くという選択をする者が多いといえるのかもしれない。
- 全体的に、若者が地方から進学や求職のため集まってくることから、地方にくらべて人口にしめる若者の割合が極端に高いと推測すると、彼らも分母に含まれる出生率や有配偶率、持ち家比率は、統計上低くなる。
- 地方に比べ、学生や1人暮らしが多く核家族化が進んだ結果、借家が多くなり持ち家比率が下がる。
東京は、物価高や労働環境を改善しないと、子どもを産める環境ではない。また、広い持ち家を持つのは難しく、ある意味貧しい生活をしているといえる。
冒頭の表、愛知県については、トヨタのおかげなのか、求人倍率も高いし、その他指標も概ね良好である。
持ち家率、新築持ち家率が全国平均を下回るのはなぜだろう。みんなトヨタの社宅に住んでいるのだろうか。
と、いうわけでデータに基づき、私の妄想をだらだらと書いてしまった。
これを書き終わるまでに、木村カエラの新譜『Scratch』を3回聴いてしまった。いろいろな楽しい刺激が溢れるおもちゃ箱みたいなアルバム。
◆◇◆表の説明◆◇◆
求人倍率=「有効求人倍率(倍)」厚生労働省(平成18年12月)
出生率=「特殊合計出生率」厚生労働省(平成17年度)
有配偶者率=「有配偶率(%)」総務省(平成12年度)
持家率=「持ち家比率(%)」総務省(平成14年度)
新築持家率=「着工新設持ち家比率(%)」総務省(平成14年度)
Av=全国平均*
*1:詳しくは、東京労働局のHPで報道発表資料をよく読むと職種別求人倍率が毎月公表されている。または、id:horikita800:20060809
*2:持ち家に最低4000万円〜5000万円かかると考えてシュミレーション