島崎藤村の『破戒』を読む。
読後を待たずに感想文を書く。
主人公と一緒に自分の心の動きをつづるのだ。
最後。
AMAZONのカスタマーレビューを読んだ。
この小説で差別のことを知ったとか、深く考えたとか、派閥や国籍そして放射能など差別は昔の問題ではないという社会的な意見多数。
主人公の現実と自我の格闘については、破戒のシーンに涙した感想があった。また、カミングアウトが弱々しい謝罪であった点に「不合理な社会の残酷さや巨大さを感じた」などと読む意見が3件程度あった。これは私と同意見。
「主人公が弱さも迷いもある等身大の人物として描かれ必死で克服しようとするところに感動がある」などその通りだと思った。
ただし、主人公は出身の噂が広まってしまい追いつめられてカミングアウトしたにすぎないとする感想が複数あり、そこは否定しずらいが、追いつめられて”受動的”にした”謝罪”と読むのは私は辛い。
主人公は「これまでは偽りの人生だった」などと決意し自分をごまかすのは止める動機がみられるので、追いつめられたことにより”目覚めて”そこから”逃げずに対処した”と読みたい。そこに弱さの克服のドラマがあると思う。
本当は”堂々と”自分の出身に対する誇りに満ちた”宣言”であってほしかった。
テキサスに旅立つ結末については、「逃げではない、時代的にしかたない選択」が2票、「読んで考えて欲しい」が2票。
私は、テキサスで見聞を広め数年して日本に戻り教育界に貢献し差別や格差(貧困等)をなくす働きをするという未来予想であり、あくまでも日本に戻ってきてほしい、現実に不適応しないでほしいと考えている。
そうでないと、主人公の宿命が暗く、日本の将来も暗い感じで救われない。
誰かが言っていた。神様は存在しないかもしれない。しかし、人間には理性があり社会が良い方に進む力を持つと信じる。
おそらく島崎藤村も、人間には理性があると信じていた。だからこそ本作のような小説を世に問うたのであって、自分は弱い人間だと白状するだけの私小説ではないと思うけれど、その針がいったりきたりっていう。
まあ、偉そうなことは言えないけれど、差別や格差などについて改めてたくさん考えたし、自分にも向き合った。
影響力のある作品であることは確かだ。
(:D)┼─┤バタッ ←宇多田ヒカルのまねw
- 作者: 島崎藤村
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