I me Mine

根暗なマイハートのネジを巻け!

国民生活基礎調査

消費増税など不景気な話題において、世間でいう「生活が苦しい」の正体を知りたくて、調べてみた。


まず、妹に聞いてみた。妹はしっかり者で昔からお金がないお金がないと言い、なんでかと聞くと貯金してるから使える金がないという人だった。今も金がない、なんでかと聞くと子どもの習い事が月3万円×3人で、働きに出なければいけないと真剣顔だ。


<1>厚生労働省「2011年国民生活基礎調査」によると、全世帯の平均所得は年538万円で、中央値は年427万円、所得が年300万円以下は全体の30%1500万世帯。所得が年1200万円以上は7%300万世帯。高齢者世帯の公的年金・恩給は年207万円だった。


<2>世帯主の年齢別にみた一世帯あたりの平均所得をみると、29歳以下が年314万円、30歳代が515万円、65歳以が441万円。
年金は世代間の支え合いと聞くが、支える側の体力が、ない。


<3>”生活が苦しい”と回答した割合は、全世帯62%、高齢者世帯54%、児童のいる世帯69%。


<4>世帯構成を見ると、全体4700万、うち単独1200万世帯(25%)、夫婦のみ1100万世帯(23%)、夫婦と未婚の子1500万世帯(31%)、一人親と未婚の子(7%)、三世代(7%)
65歳以上の居る世帯は42%、その内65歳以上のみ世帯21%(単独世帯10%)
世帯数は増えている。単身・二人世帯が増えているからだ。
平均世帯人員の推移をみると、平成3年3.04人→平成23年2.58人と20年で0.46人減っている。
平成13年2.75人から10年で0.17人減っている。
なお、昭和28年には5.0人だった。


<5>所得中央値が年427万円、「毎月勤労統計」正社員の平均所得が年484万円。社会保障費と所得税住民税を差引くと年300万円台になる。国民5割の可処分所得は年300万円台と読める。
300万円をどうみるか。世帯構成を考えると、2人以下で暮らす世帯が全体の5割(単独+夫婦のみ世帯48%)となっている。その内65歳以上のみ世帯21%(単独世帯10%)【再掲】。2人だから年収300万円でも大丈夫だと言えるかどうか。夫婦2人くらしが23%あり、子を設けたいが、年収が少ないから出産に踏み切れない世帯もあるのではないか。子育て支援の充実が急務なのではないか。


<6>児童(18歳未満の未婚)のいる家庭は、25%であり、25年前の1986年の46%から20%減ったのに驚く。育児をしている世帯構成が少数派に転じた。なお、父子または母子家庭が全体の2%弱。


雑誌「旬刊 福利厚生」の117企業調査によると、7割の企業に家族手当があり平均は年3万円(4人家族)だった。これに「子ども手当」をオンすると年70万円の収入になる。なお厚労省国民生活基礎調査」によると、児童のいる世帯の平均所得は年658万円で全体平均に比べ年120万円多い。ただし、児童のいる世帯の母の仕事有りが63%、所得税配偶者控除の38万円と、70万円を足した額が120万円に近いという、この理解でよろしいか。


家族手当は「労働の対価」と関係ないので不公平だが、賃金には「生活保障」の役割があり、子育てを推進する今日的な意義もあり、家族手当があったほうが優秀な人材を雇えると企業が判断しているのかもしれない。むしろ、年功序列の傾斜が弱まった分、家族形態に対応した手当支給は一つの手かと思う。


いずれにしろ、<5>で想定した可処分所得300万円の夫婦二人暮らし(または単身世帯)から、年658万円(可処分所得約550万円)の児童のいる家庭までに収入を引き上げるには、雇用形態の問題(正社員化、もしくは正規・非正規を問わず同一労働における均等待遇の実現)も含めた見直しが必要な状況である。


<7>富裕層のこと。例えば年収1200万円以上の世帯(300万世帯)に一律100万円増税したらどうなるか。300万世帯なので3兆円の増収。一律400万円だと12兆円で消費税5%と同じくらい。現在、年収1200万円の場合、納める所得税は約400万円(税率33%)。各種控除があり実際は違うが既に高い低い?
反対に貧困のこと。生活保護世帯数が約150万世帯(全世帯の3%)。年収が1200万円以上の300万世帯(同7%)から生活保護世帯への所得移転という構図か。ただし、所得が多い層は自分達が努力しているとの自負感が強いため、生活保護世帯への十分な理解が得られないと不満を招くだろう。ただし、マイケル・サンデルによれば成功者の努力すらも「努力できる環境に置いてもらえた」おかげであるとのことだ。また、成功者もいつ人生のトラブルに巻き込まれるか分からない。お互い様の精神が肝要であるが、生活保護世帯に対する一般の正確な理解促進や、生活保護世帯の自立・就労支援が大事なことは言うまでもない。さらに生活保護世帯の暮らしにシェアを導入することで保護費を減らし、復帰の伴走者を増やす工夫も考えられる。


<8>家族のこれから。児童のいる家庭が4世帯に1世帯となった現状で、サザエさんが理想像なのか、新たな幸せの形を模索するか。二人以内の世帯が半数を占めるが、社会保障費を減らすため家族が一緒に暮らす共助に導びくのか。消費税の低所得者手当は、この現状でどこに線引きするのか。


「政治家は国民のことを分かってない」という。


「国民」は何処にいるのか。


二極化して孤立化して、Helter Skelter(てんやわんや、混沌)な群像ばかり見え、誰もが「生活が苦しい」と言う。ただ、そう主張するだけでは社会の活力が削がれていく。
先日発表された「平成24年版労働経済白書」によれば”分厚い中間層の復活”が目標とされている。「その未来像に映された国民」を目がけて今後政府の政策や財政が投入されていくわけで、、、


<9>さて、自分たちに出来る事はなんだろうかという問題に突き当たる。
消費増税法案には付帯条件がある。2020年までに平均2%経済成長すること。これを目標に考える。
私の計算では国民総生産500兆円を2%引上げる10兆円の消費を増やすためには、

  1. 各世帯が等しく20万円を去年より多く使う
  2. 各世帯が年収の4%を去年より多く使う

20万円を多く使うのは難しくても、去年より4%多く使うのなら出来そうではないか。
いずれかの励行を是非に!国のためっ
(国民4700万世帯、平均所得年538万円として計算)


<10>敢えて明るい話題を。一人当たりの所得で見るとそれほど減ってない、という見方。
平成23年の平均所得は538万円で、10年前(平成13年)602万円から60万円(1割)減った。
20年前(平成3年)629万円から90万円(1.5割)減った。
一世帯の平均所得は減少傾向であるが、世帯構成人数が減っているため、一人あたりの所得は横ばいとなっている。
これをどう受止めるかは、個々人の状況によるだろう。


■世帯数と平均所得を元にした試算表

年度 総所得額(試算) 平均世帯人数 一人あたり所得
平成22年 538万円×4700万世帯=253兆円 2.58人 209万円
平成13年 602万円×4600万世帯=277兆円 2.75人 219万円
平成3年 629万円×4100万世帯=258兆円 3.04人 207万円

厚生労働省国民生活基礎調査」を元に計算)


ただし、社会の活力は失われているようだ。
すなわち上記計算によると、平成13年の総所得額277兆円から、平成22年が253兆円に減ったため、全体で24兆円の消失。
24兆円は、国内の外食産業の市場規模に匹敵する額である。
(食の安全・安心財団 外食産業総合調査研究センター http://anan-zaidan.or.jp/data/)


一人一人がお金を抱えたまま”孤族”として生きるか、共助しお金を寄せ合ってかつての大家族のような暮らしぶりによる豊かさと窮屈さを選ぶか、打倒「生活が苦しい」のため、このあたりの生活スタイル(シェア)にも着眼のうえ、産業政策と組み合わせた複眼的な施策や意識の深堀が必要と考える。


memo


金は天かの回りものというが、この10年で減った24兆円は何処へ
企業の利益(内部留保)か?
企業会計はお小遣帳ではないので、内部留保がすべて現金というわけではなく、前払金、出資金、貸倒引当金などの使途が資産として計上されており、さらには建物、機械、在庫品などの資産価値が含まれている。
すなわち賃金に回せるという単純なものではない。
ただし、労働総研によると「実際は設備投資は減っていて、有価証券への投機が増えている。企業の内部留保は総額461兆円(10年度)。大企業だけで266兆円に達し、この10年間で100兆円近くも増加している」とのことである。


【連結内部留保 上位10社】
企業名/2011年3月期
1/トヨタ自動車/13兆8630億円
2/本田技研工業/7兆7826億円
3/NTTドコモ/4兆7250億円
4/キヤノン/4兆3141億円
5/パナソニック/4兆1662億円
6/日産自動車/4兆24億円
7/三菱商事/3兆4946億円
8/東京電力/3兆2652億円
9/ソニー/3兆876億円
10/関西電力/2兆4595億円
(2012年国民春闘白書から)




【平成24年版労働経済白書 第2章】
リーマンショック後の 2009 年度以降は、従業員の減少が労働分配率の低下要因となるとと もに、2010 年度には一人当たり人件費の減少も低下要因となり、今回の景気回復局面においても企 業が人件費を絞り込む傾向がみられている。
● 企業行動の変化とカネ余り
第 2 -(2)- 32 図により、企業部門における貯蓄投資バランスをみると、1990 年代末から貯蓄超過の状態が続いている。これは、企業がマクロでは金融機関からの借入主体から返済も含めた貯蓄主体に変わってきたことを示している。
バブル崩壊以降過剰債務に苦しんだ企業は、会計基準の変更もあり、負債の返済に力を入れるとともに、資金調達手段を金融機関からの借入による間接金融主体から、社債の発行などにより資金を調達する直接金融主体に切り替えてきた結果としてこのような現象がみられている。
こうした取組もあり、最近は企業の債務調整が進み、財務体質も相当程度改善してきた 132。
こうした中、第 2 -(2)- 33 図をみると、国内銀行の預金と貸出金の差額は、2001 年度に預金超 過となった後、預金超過幅が拡大し、2011 年は前年より 11.6%増の 173 兆円となっている。合わせ て、国内銀行の国債保有残高も増加で推移し、2011 年は前年より 11.6%増の 163 兆円となっている。 また、2002 年 3 月には 43 兆円を超えていた銀行の不良債権は減少を続け、2008 年にはピーク時の 約 4 分の 1 の水準となった。その後は横ばいで推移し、2011 年 3 月末の時点で約 11 兆 500 億円と なっており(付 2 -(2)- 13 表)、こうした面から銀行の体力の余裕度は増していると考えられる。
しかしながら銀行は、集めた預金を企業に貸し出す割合を低下させ、国債で運用する割合を上昇させているが、これは、国内企業が直接金融志向を高め、貯蓄超過に転じたことに伴い、銀行が資金供給元としての役割を低下させていることを示している。
また、第 2 -(2)- 34 図によると、2000 年代半ばから、企業は生み出した付加価値を海外投資に 振り向ける傾向が強くなっている。これは、第 1 章第 3 節においてもみたとおり、企業が収益性の高い海外の需要を取り込むための行動であると考えられる。
一方で、第 1 章第 1 節でもみたように、現在日本経済は依然として需給ギャップをかかえ、需要不足状態が続いている。企業が生み出した付加価値を国内で有効活用し、国内経済が好循環を生み出す ような環境を整えていくことが重要である。そのための一つの手段として、人件費をコストのみならず、人材への投資及び内需としての消費の源泉ととらえ分配の度合いを増やしていくことも、国 内経済の活性化のために重要な課題であると考えられる。