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永遠の旅行者

永遠の旅行者〈上〉 (幻冬舎文庫)

永遠の旅行者〈上〉 (幻冬舎文庫)


永遠の旅行者の感想文。


非常に示唆に富んだ物語。
実際、頭のいい奴らが表舞台で裏をかいて調子こいてるっていう、表社会の裏舞台を垣間見る思いがする。
本書に書いてある示唆を、節税策として実行するのは自由だけど、結果の責任は一切負わないと、冒頭に書いてある。


以下、本書の示唆により考えたこと。
私、思うに。




一 金融・税制の影


富裕層の詐欺被害。
富裕層が投資詐欺にあう事件は、節税対策の可能性がある。例えば、詐欺師と投資家が仲間で、表向き損失を出すことで帳簿上資金を無くすことができるばかりか、税法上損金扱いにでき、他の所得に発生する税を圧縮できる。
もちろん、損失は表向きで、現金は海外の裏口座に振り込ませる。


次に、債権回収会社と銀行のこと。
銀行が払う法人税が国地方で40%として、利益が100万円だと40万円が税金になる。


シナリオ1)100万円の不良債権を二束三文で債権回収会社に売却し、損金計上すれば、先の利益と相殺して利益0、税金0になる。100万円を放棄することで払うはずだった税金40万円が浮き、債権放棄による損失は、は60万円…
 利益100      →利益100×40%=税額40
 利益100ー損金100→利益0  ×40%=税額 0
 ※100万円の債権放棄により、納税額☆40万円が減額された!?                           


シナリオ2)法人税率が国地方で20%の場合は、100万円の利益と100万円の債権放棄をしたとき、払うべき税金20万円が浮くため、債権放棄による損失は80万円。
 利益100      →利益100×20%=税額20
 利益100ー損金100→利益0  ×20%→税額 0
 ※100万円の債権放棄により、納税額★20万円が減額された!?


☆★銀行の立場で債権放棄の損得を考えると、理屈上は法人税率が高いシナリオ1の方が減税効果が大きい…


銀行も企業も、損失を出すとき、同時に払うべき税金も減るという税効果会計的な損得からは、法人税率は高い方がよい。
実際、自民党税制改正案は、法人税率の「基本は高止まり」させておき、研究開発や、経済特区など「企業の申請に基づく減税策」が中心となっている。案外、経済界の要望だろう。
結局、法人税率が高い方が、銀行が中小企業に対する不良債権の債権放棄をする動機付けが増し、中小企業の救済にも繋がるというなんとも逆説的な理屈に、私の知的好奇心がくすぐられるのです。




二 戦争・外交の影

旧ドイツ軍の旧ソ連侵攻により2千万人が犠牲となった。
ドイツ兵240万人、日本兵60万人以上がシベリアに連れ去られ、さらに強制労働に従事した旧ソ連の国民は2000万人を超えた。

旧ソ連が行った強制労働=2300万人*1
なお、日本兵6〜7万人は日本に帰って来られなかった。


太平洋戦争末期。日本は、和平交渉のカードとして、日本兵をソ連に提供(日本に戻ってもらっても食糧不足だから困る)まで考えていたたらしい。

多くの兵士をシベリアやモンゴルの荒野に置き去りにした日本国は、帰国した抑留者に対置、抑留期間に応じて棒給を支払った。
終戦直後の十年間で物価は約3百倍にに値上がりしたが、給付にあたってこのインフレはいっさい考慮されず、リンゴをひとつ買うと棒給の1年分が消えたという。
抑留当時の労働に対しては、ソ連政府に補償を求めるべきだが、日本国は1956年日ソ共同宣言において請求権を放棄していた。


いつの話?68年前…憲法の問題?ちがう、戦争の問題?ちがう、外交の問題!


平和は第一だが、外交による不利は戦争の犠牲より大きな損害を与える可能性がある。


数十年前に日本が受入れた米国設計の原発、ハリケーン対策のため非常電源が地下に埋め込まれた原発の設計変更を許されず、また事故時の米国メーカーの賠償責任を一切免除して建設した福島第一原発がもたらしたものは何だったか?


現在行われている経済連携協定(TPP)は、戦争もしないで、アメリカ経済に日本が包括されていくプロセス(まあ、首都東京に米軍が駐留する日本では戦争をするまでもなく負けだが)。
日本は経済全体に占める輸出の割合は20%未満であり、80%以上は内需型産業。
内需型産業の例)*2

  • 製造業(特に衣料雑貨、印刷、しょうゆ等加工食品、飲料など)
  • 卸・小売業(百貨店、スーパー、コンビニなど)
  • 運輸・旅客・郵便業
  • 金融・保険業
  • 医療・福祉
  • 建設・土木業
  • 情報通信業(新聞・出版・映像・音楽・アニメ等コンテンツ産業、公共放送、電話、ソフトウェア、プロバイダーなど)
  • 不動産・物品リース、学術研究・技術サービス業
  • 娯楽業(映画館、コンサート会場、遊園地、テーマパーク、スポーツ施設、パチンコ店、競輪場など)
  • その他サービス業(理美容、クリーニング、旅行、広告、警備、職業紹介、廃棄物処理、弁護士・会計士を含む士業など)
  • 宿泊・飲食サービス業
  • 農林水産業(特に米、生鮮食品など)
  • 電気・都市ガス・熱供給・水道業


この80%を絡めとるTPPが怖い。
言い方を変えると、関税など貿易以外にも、公共事業、知的財産(薬品など)、郵政、保険、通信(電話、インターネット)、雇用などが検討されているようだ。


戦争より外交が怖い。
麻生総理が「失言」したとおり、正当なプロセスを経て軍国化した旧ドイツの政府と国民の空気が怖い。
法規をツールとして操るインテリが怖い。

*1:日本も朝鮮人17万人を強制労働させてたらしい。

*2:最近では、これら従来は内需型とされてきた産業も海外に進出を図っているらしい。現在の経済連携協定は十分フォローできているのだろうか?