I me Mine

根暗なマイハートのネジを巻け!

高尾山(たかおさん)

東京から日帰りできる山、今日は高尾山。

  ⇒青梅梅御嶽山、高尾山、秩父御岳山の比較表



1 高尾山の光と影


高尾山は八王子市にある。

登山客は年間250万人で、「世界一登山客の多い山」といわれる。*1

アクセスは、都心から京王線やJR線で1時間程度と便利。

夏季はビアホールがあって、都心の夜景を背景にグラスを傾ける、おしゃれスポットになっている(7月〜9月「高尾山ビアマウント」営業日はケーブルカーの下り最終便が21時45分に延長)。

山腹には、関東三山のひとつ「高尾山薬王院」もある。

また、ミシュランガイドの三ツ星に選ばれ、外国人旅行者も増えている。

マスコミが取り上げ、勝手に客が増えていく様は、屋久島のようで、まさに棚ぼた「勝ち組観光地」だ。


でも、それゆえに観光客のトイレ問題や植生への影響など課題を抱え、地元八王子市をはじめ関係各署による対策が講じられている。

八王子市の予算書をざっとみると、高尾山周辺の観光施設整備等に年3億円程度支出し、市営駐車場料金収入等が年5千万円程度ある。
多くの客は山に来て、そのまま帰るので、地元にお金が落ちるのは山の土産屋や飲食店など限られた範囲である。
ゆえに高尾山は、八王子市にとってお金と手間はかかるが、税収と地域振興に結びつけることが難しい微妙な存在であると想像する。知名度の向上とは裏腹に。

このため八王子市は「高尾の里拠点整備計画」を策定し、拠点施設を核として観光客が高尾の里を回遊することで地元に広くお金の落ちる観光地を目指している。
平成20年度に実施設計や運営計画策定に7千万円程度支出され、平成21年度に着工予定となっている。
高尾599ミュージアム|八王子市




2 高尾山を歩く


能書きはさておき、先月の夏休み期間、お盆翌週の金曜日に高尾山に行ってきた。


高尾山、意外と客少なし


でも、以下の点ですばらしい!

  • 1時間弱の徒歩で頂上に着き、手頃な達成感が感じられます〜
  • ルートが8つ、つり橋や尾根歩きなど好みに合わせて選べます〜
  • 自然保護啓発や動植物を紹介する案内板が充実しています〜
  • 山頂で名物そばが食べられます、天気しだいで富士山も見えます〜
  • 幼稚園、小学生の遠足が多く来ていて、心和みます〜


以下は、今回の高尾山の旅の記録である。
行きは1号路、帰りは4号路を歩く。
高尾山登山コース | 高尾登山電鉄株式会社 公式サイト


朝9時に新宿駅を出て、10時には京王高尾山口に着いたと思う。
しかし、夏休みにもかかわらず駅は空いていた。
実は、何年か前の日曜日に行った時は駅がごったがえしていて凄かったイメージがあっただけに、これは意外だった。
上記「高尾の里拠点整備計画」によれば、高尾山は5月、11月、1月がピークで、この3ヶ月に年間の半分の客が集中する。なお、7〜9月はさして客の多い時期ではないとのこと。理由はファミリー層があまり来ていないためと分析している。


さて、外国人旅行者が増えていると聞くが、なるほど高尾山口駅に置いてあるパンフレットや、駅前の観光案内版も英語・中国語・韓国語表記されていた。


駅前の観光案内板





上りはリフトを使った。
リフト乗り場の改札は、切符バサミで駅員がチョキチョキ切符に切れ目を入れていくオールドスタイル。
なお、リフト昇降時の注意が英語でも書いてある。危険を伴う場所の多言語化はポイント高し。


12分程度で山上駅に到着するも、やはり客は少ない。
先週行った青梅御嶽山のほうがよっぽと人が多かった。しかし、カップルの割合はさすがに高尾山の方が高い。


都心方面は曇り空


1号路は直線的なハイキングルートで、基本的に舗装された道を歩く。
途中、ごま焼き団子を買って食べたり、ハイキング気分満喫。


●MEMO● ちょっと、水道問題

途中で水道工事をしている現場を発見した。なるほど水道は問題なんだなと思ったら、なんと上水道を麓(ふもと)から山頂まで引く工事をしているという。
看板に「『東京水』が頂上で飲める」。みたいな宣伝文句が書いてあった。
平地から標高約600mの頂上まで水を汲み上げる施設を作るというのは、相当なもんだなと感じた。

また、公衆便所に立ち寄ると、水はチョロチョロとしか出ず、近くの沢から汲み上げているから無駄に使うなと注意書きが書いてあった。

さらに、頂上にあるそば屋の飲料水は、小仏峠から引いてきた水だから大切に飲むように注意書きが書いてあった。

山頂で必要な水というのは、数軒の食堂と、便所くらいだと思うが、ニーズがあるんだな、250万人が来るんだから、個人的には、「東京水」よりも小仏峠から引いてきた水の方がおいしそうなんだけど。
なお、高尾山薬王院にも配水される。

頂上に着くと11時になっていた。
頂上はさすがに、人がいて日影で休んでいるシニア世代の小グループや、カップルが見受けられた。


富士山が見える方の展望台にて。
肉眼では、うっすら富士山が見えたのだが写真には写らなかったようだ。
多くの観光客が一生懸命富士山を撮影していた。


展望台


お腹が空いたので、名物の蕎麦を食べる事とする。
生ビール中ビンが600円と、山頂にしてはリーズナブルな値段でビックリしたが、ビールはおあずけとし、蕎麦とおにぎりのセットを注文した。
本当は、カレーセットなどがあれば食べたかったのだが、蕎麦とおにぎり以外には、おでんなどで、炭水化物が補給できるものは見つけられなかった。ご飯もの、もっとあればいいのに。

他の客をみると、工事現場の作業員らしき数名が身体を休めているのと、ママ友グループが子連れで来ていてビールを飲みまくっていた。あと、中学生っぽい2名の男子が来ていた。


食後、12時すぎの頂上は、幼稚園の遠足ちびっ子たちで溢れかえっていた。
観光客の数も多くなっていた。
やはり、人は多く来るんだなと感じた。山頂で人ごみを避けたいなら11時くらいの登頂を目指すべきなんだなと思った。


その後、山頂のビジターセンターに立ち寄った。
11時からと13時(だったかな)に、ガイドが周辺を案内してくれるらしい。
センターの設備は古いが、職員手書きのカップル向けルート紹介や、手にとって動かしたり、フタを開けると裏に説明がある展示物などインタラクティブに高尾山の自然観察を補完してくれる。


さて、下山の時が来た。
道標に導かれて4号線を歩く。つり橋が目当てだ。
ただし、下りの傾斜が半端じゃない。
また、階段状の遊歩道の段差が大きく歩きにくい。
階段の脇を歩こうと思うが、植生が踏み荒らされてしまうから遊歩道の脇を歩いてはいけないことになっている。
ていうか、自分、下りが苦手?
後方から幼稚園グループがキャッキャ言いながら降りてくる。


そして、待望のつり橋に到着する。
つり橋では、皆がプライベート写真を撮りたがるので、撮影待ちの行列ができている。
せかされるようにつり橋を渡る。
でも、つり橋を渡るなんてテンションが上がる。
後ろから来た幼稚園児達のボルテージは最高に達したようで、つり橋の上で「ヤッホー!!!」と叫ぶ声はいつまでも続いた。


つり橋


その後、4号路は1号路と合流し、ハイキングも終了を意味する。


下りはケーブルカーを使う。
出発と同時にトンネルに入る、どこかで体験したような既視感を感じる。
ケーブルカーが清滝駅に着き、高尾山口駅まで歩く。
たしかに駅に向かうメイン通りのお店以外に、周辺の商店街に立ち寄ることはあまりないかもしれない。


高尾山口駅のホームに向かうと電車が待っていた。帰りはJR線に乗り継ぎ、通勤電車の姿に一気に現実に引き戻されるも、気分は晴れ晴れしい。


●MEMO● シャッターを下ろすのは、あなた。


一部、高尾山の食堂売店は午後4時ごろ客足が鈍るとシャッターを下ろすという噂がある。もし本当なら遅く来た観光客は、名物の蕎麦を食べられず、土産物を買う店もなく、ガッカリした印象を持って帰ることになる。


NHK『つばさ』特需の観光地にもこのような傾向はみられる。川越でも午後4時にシャッターを閉める店を見た。長瀞でも午後4時になったら店はお仕舞い、川下りが終わる時間だからとお店の人が言っていた。


殿様商売を覚え衰退する観光地は多い。
伊豆諸島の島々がそうだ。日本人の海外旅行が難しかった時代、約40年前に伊豆諸島はピークを向かえ、客を泊める場所がなくて、廊下や押入れや厨房や島民の居室にまで客を泊まらせた黄金時代があった。待っていれば客が来る状態が長く続き、おもてなしの精神は薄れ、島外から粗悪な観光業者が参入したこともあり、お客の満足度も下がっていった。
現在、当時の客はリピーターにならず、海外や沖縄に客を奪われ、観光客数はピーク時の3分の1にまで減った。高速道路の無料化が現実味を帯びる現在、離島の観光はますます厳しい。
この逆風を追い風にすべく、伊豆諸島のHPをみると様々なキャンペーンやイベントが打たれている。お客を呼び込み、もてなす観光再生に向けた取り組みが続く。今なら癒やしの伊豆諸島に出会えることだろう。
伊豆諸島・小笠原諸島の総合観光情報サイト 東京アイランドドットコム


シャッターを下ろすのも、上げるのも地元観光業者の意識しだいだ。


3 まとめ


と、言う訳で高尾山のハイキングは正味3時間。
アクセスがよく、整備されたハイキングコース、頂上&富士山という分かりやすい目標、徒歩1時間という適度な所要時間、ケーブルカーなど非日常の演出がある東京の遠足地として王道。日常と非日常との交差点。


また、突出して観光客が多いことから、観光と自然保全の両立、下から上に水を上げるような上水道整備、高尾山を拠点とした地域振興など、あらゆる意味で社会勉強の教材になる。けっこう奥が深い。


これから秋の紅葉シーズンを迎える。高尾山は3時間では足りない。
また、足を運ぶことになりそうだ。

付近から山頂までのアクセス
京王線 高尾山口駅下車〜「ケーブルカー」高尾山駅(6分)〜徒歩(50分)

*1:富士山は年間20万人