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頑張っている2

事業仕分けを聴いた。


インターネットで中継しており、資料もPDFでダウンロードできる。
行政刷新ページ移転のお知らせ - 内閣府


この3日間で私が聴いたのは、「都市地域づくり推進(国土交通省)」「大学の先端的取組支援(文部科学省)」「ジェトロなど独立行政法人経済産業省)」


総じて、論点としては、

  1. 国がやる必要性(民間、地方自治体への移管)
  2. 事業、他省庁との重複
  3. 関連団体が持つ基金等の返納
  4. 事業の成果、投資に見合う回収があるか


という部分が気づいた。
印象としては、


財務省の狙いに乗った民主党
配布資料をみると、最後に(予算担当部局用)と書かれた資料があり、財務省主計局が考えた論点が記載されていて、審議の前に説明もある。
事業仕分けで、財務省主計局の挙げた課題に一定の「お墨付」を貰い、予算編成に生かそうという目論みが露骨だ。
民主党事業仕分人の頭の中も、財務省主計局が示した論点について一定の結論を得る事でいっぱいになっているように見えた。
ジェトロなど独立行政法人の審議では、民主議員が「仕分けの結論を出さなければならないので・・・」と、民間の仕分け人と官僚の質疑をさえぎって、議論を財務省の論点に戻す場面が見られたのでそう思っただけかもしれない。
財務省の論点は、主に上記の1から3だ。おそらく自民党時代から肥大した国の事業と組織を整理したいだけなのだ。



◆熱心な民間仕分け人

聴いた範囲では、民間の仕分け人の関心は主に、1と4だったように思う。あまり、財務省のペーパーに関心なくそれぞれの得意分野から、事業主体と成果に力点を置いた質問が発せられていたと感じた。また、朝9時30から18時40分までの過密日程で、今日なんかは時間延長でやっていた。パフォーマンスなんて冷ややかに見るマスコミもあるが、一定の努力は認めるべきだ。


◆意外と素朴な官僚
回答している官僚たちは○○局長だとか名乗っていて、普段では地方の県知事レベルでも足元に寄せ付けないだろう「お上」だ。
でも、その話し方は、人にもよるが朴訥としていて、あまりエリート然としていなかった。ほとんどが東大出身だと思われるが、立場上からか丁寧だった。ただし、わざと質問の趣旨をはずしたり、概念を答えてばかりで蓮舫議員から回答をさえぎられてしまう場面もあった。一方で、審議の結果が出た後に、質疑中に答えられなかったデータを回答し始めて、問題を大きくしてしまうまじめな官僚もいた。また、もう少しで民間仕分け人に「授業」を開始してしまいそうなほど得意げな官僚もいた。
たしかに、官僚に気の毒な面もある。前政権が掲げた政策や、おそらく組織維持のための口実で行っているような事業に対して、仕分け人から「正論」で挑まれたら、答える官僚だって「これは、族議員に言われたから理屈をつけてやっている事業なんだよ、そんなにエキサイトするんじゃね〜よ、俺の代で廃止されたら出世に影響するんだから黙れよ」と答えたい場面もあったのではないだろうか。


24日「都市地域づくり推進(国土交通省)」
市町村が街づくりをするときのガイドラインやマニュアルをつくって、専門家を派遣するという事業。地方は人材不足と情報不足という問題意識がそこにはある。
ただし、民間仕分け人の指摘は違った。「地域にこそ街づくりのノウハウがある」「マニュアルなど事例を各地域から集めてインターネットで公表すれば足りる」「紛争解決ガイドラインは、逆に紛争の種になる(ガイドラインより扱いが悪いとか条件闘争のネタにされるだけ)」「マニュアルに意味はあるのか、失敗事例などを実際に聞き取りを行わなければ分からないことは沢山ある。後で専門家を派遣するくらいならマニュアルは一層不要だろう」という突っ込みを受け、結果「廃止」となった。
国の立場からいえば、マニュアルやガイドラインのような指針は国がつくるべき、という考えなのだろうが、仕分け人の発想は違った。
そういえば、マニュアル作成等の情報収集や分析に調査会社を使う事にも批判の矢が刺さった。「税金で調査会社に勉強させる必要はない」と。役所にノウハウを蓄積させるためには、調査会社に外注しないで役所の職員が自分で情報収集など行うべき、という指摘。
国の立場からいえば、外注はコストダウンと民間ノウハウの活用、という考えなのだろうが、調査会社の裏事情を知っているらしき仕分け人に言わせると調査会社は国の調査を受託して会社のノウハウとして蓄積し、民間企業相手に商売をするのだそうだ。ただし、資料には仕分けに載った事業の他にも数十件の調査を予定していると書いてあり、到底、役所の職員が自分達でやる分量ではないという状況もあり、私なんかは、調査は民間調査会社に外注することは問題ないんじゃないか、調査会社が国の調査を受託して「勉強」しているという背景があるなら発注費用を縮減してもいいのではないか、と考えた。


25日「大学の先端的取組支援(文部科学省)」
大学の就職支援や留学生受入支援や研究の支援を30など優れた取り組みに限ってモデル的に支援する事業文部科学省の回答によれば「弱小大学には就職情報の収集や外国語対応の授業を行う余力はない」ということ。また、支援した大学は発表論文数や海外から引用される論文数が増え、量も質も向上したと胸を張った。たしかに、優れた取り組みを選んで支援し、その成果を全国の大学にフィードバックすることは、競争を刺激するし、全体の利益にもつながると考えれば国の役割として、おかしいことはないのだが。
しかし、蓮舫議員から「国が弱小大学という言葉を使うのはいかがなものか、どの大学も生徒にとって貴重な勉強の機会だ(というような内容)」という、ごもっともな専制パンチをくらい、さらに、某仕分け人から「選定された大学は、論文数が増えたというが、選定していない大学の論文も増えているんじゃないか」と質問され、文部科学省の担当は「選定されていない大学も同じくらい増えています、ただし質が違います」と答えた。結果、質の違いを説得できず、文部科学省は説明に窮することに。また、就職支援や留学生受入は大学が各自努力すればいいことだ、経常的経費の補填になっている、選定数にも多いとか少ないとか色々意見が打ち込まれ、文部科学省はサンドバッグ状態になった。
たしかに、私がみても就職支援や研究のレベルアップは各大学の役割で、それを競い合うために独立行政法人化し、成果等に基づき交付金が増えたり減ったりする仕組みにしたのではなかったか、これでは経常的経費を補うための口実にすぎない事業ではないかと一目で思った。
しかし、よくよく文部科学省の答えを聞くと、旧帝大でも英語の授業がひとつも行われていない大学があるとか、いわゆる「弱小大学」には求人が来ないし生徒の就職活動状況も把握できていないのだそうだ。じゃあ、しょうがないなと思って、事業を選定された大学をみると有名大学が多いから驚く。「弱小大学」の支援じゃないの?と。しかも、全国の大学と大学院は沢山あって、これら全部からみて、この事業に選ばれた大学数は全体の10パーセントに満たない。文部科学省の説明でも、90パーセント程度の大学がこの事業の恩恵を受けていない。それでもって「弱小大学」を救うと言われても理解に苦しむ。
そこで、また蓮舫議員が「厚生労働省の就職支援策と連携したり、生徒への支援が行き届かない大学を把握したうえで事業を進めるのならともかく、そういう説明も無く漫然と支援する大学が選定され事業が行われているのは理解できない。もっと理解したいので説明してほしい(というような内容)」という、またもっともな指摘をした。
結論は、「予算縮減」になった。


26日「ジェトロなど独立行政法人経済産業省)」
日本貿易振興機構JETRO)など、4つの独立行政法人が評価された。1時間で4つの法人はさすがに多く、議論が生煮えの感があった。
経済産業省としては、各独立行政法人は時代によって役割を変え、また組織統合をして合理化しながら民間には任えない事業をやっているという考えだ。例えば、ジェトロは昔は輸出を専門にやってきたが、今は対日投資に軸足を置いている。
仕分け人は、まず、これらの団体について民間企業との競合を共通課題として質問した。ジェトロは、各地に拠点を持ちノウハウを持つ職員を抱え、民間のシンクタンクからも相談がくる程で、民間に負けないし、中小企業はシンクタンクに頼む余裕はないが、ジェトロがあれば、輸出相談や外国の情報収集の支援が受けられるということで、民間には代えられない役割があるとし、各国の大使館が担えない在外企業の相談事に対応している。韓国などはジェトロをまねして同様の組織をつくったくらいだと自信を見せた。また、海外の見本市は民間の個別企業が出展できるほどオープンではないため、ジェトロのような公的機関が出展し、そのなかに個別企業が出展することで、日本の中小企業が海外の見本市に出展できるし、各企業から半分程度の自己負担も求めている説明した。
4つの団体を通した結果、ジェトロ事業は民間になじみ、その他、石油天然ガス・金属鉱物資源機構など3団体は直接国が行うべきだという意見が出た。独立行政法人の存在意義を問う問題意識だ。
ただし、私が思うに、ジェトロなどの相談業務は、やはり公的機関だから中小企業も安心して会社の詳細情報まで突っ込んだ相談を持ちかけることができるし、見本市の出展も公的機関の信用がモノを言う世界なのかもしれない。海外におけるトラブル対応なども公的機関だからこそ、調停役が務まるのだ。ジェトロのような昔から存在している公的機関の信用力はある程度活用する方向で検討するのがよいと考える。ただし、個別の事業をみて、時代に応じたニーズ対応や合理化を検証することは重要だ。ある民間仕分け人はジェトロに詳しく「ジェトロがなくなったら在外企業は困る。大使館は何もしてくれない。実態を知っている人は分かるはずだ」と褒めた一方で「ニューヨークなど本部機能をもつ海外拠点は肥大化しており合理化が必要」とクギを刺した。
他の3団体も統合等を重ね、事業も難しく、とても短い時間で結論を出せるほど議論は深まらなかった。石油天然ガス・金属鉱物資源機構などについて、仕分け人がバランスシートなどから細かい質問をしたり、上場利益を得られたかなど質問をしていたが、経済産業省の回答は、事業の趣旨から上場利益は見込めないとか、資料はあとで事務局が対応するなどの回答となっていて、聞いていても的を射た質疑なのかそうでないのかも良くわからなかった。
結果、4団体については今後の政府の独立行政法人の見直しのなかで精査し、予算執行も見直しを行う、民間から応分の経費負担をとる、国債等を保管している部分は国に返還等を検討するという内容で、とにかく財務省があげた論点を追認するような結論となった。


感想まとめ
この事業仕分け財務省はある程度成果を挙げたことだろう。また、民間仕分け人の質問のなかから今後の合理化のヒントも得たことだろう。
民主党も、私たち国民も、仕分けの結果を守る守らないにこだわらず、このような予算編成の透明化が今後大きく育つよう注視すべきだし、仕分けの審議で出た視点や考え方を広く一般化して、あらゆる事業の見直しに活用していくのがいいと考える。
今回は、財務省が他事業との重複や国や地方自治体の経費負担等の視点から事業を選定したようだが、次回は、各省庁が抱えている負の遺産、「これ、自民党族議員の肝いりで仕方なくやってましたが、今後どうしますか」みたいな事業を世間にさらすのが良いと思った。
さらに、事業の是非を論じるよりもブレイクダウンして、事業を行う前提で事業実施方法に民間の知恵を入れる議論も重要と思う。例えば、民間コンサルタントの発注方法や、物品の購入方法、システムの設計方法や、民間企業やNPOとの協働など、事業の進め方に無駄が無いか検証することが重要だ。このことにより、効率的で効果的、かつ開かれた業務遂行ができ予算縮減にもつながると考える。