JOC評議員会での森会長発言 | NHK政治マガジン https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/53132.html…
ここで私が考えるのは、問題の発言が誰かの話を引用した形で披露された点。
森喜朗氏は、自分は事例を紹介しただけなのになぜ叱られるのかと思っていそう。
持論を補強するエビデンスとして都合の良い事例を持ち出したことに無自覚なのか、責任逃れの論法なのか。
引用しぐさに対する受け止めは以下の2通りが考えられる。
I 理の論法からはこうなる
問題部分の発言が引用であるならば、本人の意見とみなせず批判は当たらない。
Ⅱ 情の論法からはこうなる
むかし、あるフリーアナウンサーが言ってました。誰かに面と向かって「あなたこんな陰口を言われてるわよ」とペラペラおしゃべりされた。結局は人の口を借りて自分の悪口を言われた。
それは、誰かが言っているの話法で、しかも貴方のために聞かせてあげるというお為ごかし。相手は安全な場所からしかも親切めかしていい気持ちで自分の気を晴らす行為はまるで目の前で自我のお漏らしをされたようだったと。
自分の意見ではないがと断りを入れ、引用や事例を引き合いにして自分を押し通そうとするやり方はズルい。問題が起きたときに自分はそうは言ってないと逃げ道をつくっている。
さらに人の意見をよく聞いて調整する人とさえ思わせている。
この計算高い論法にどう対処したらよいのかが、この文章の本題
私は将棋のように長考してしまった。
森喜朗氏はこの引用論法の使い手らしく、
一度辞任をとどまったときは、事務総長に辞めないでくれと言われた・・・
聖火ランナーの件では、
何もないところであれば、田んぼで走るしかないねと。田んぼで走れば、作業前ですから農作業に迷惑をかけたりしないねと。空があるから空気がこもらないし。それしかないですねという意見もありますということを紹介しただけで・・・
しかし、この論法には弱点がある。
その弱点とは「貴方はどう思うか聞かれ言質をとられること」
だがその切り返しもある。
謝罪会見の場面からその手筋をみてみよう
森氏が逆に引用論法で質問を受けたときの切り抜け
▲記者 会長に向いてないとの声があるが
△森 貴方はどう思うか?
▲記者 向いてない
△森 意見としてお聞きしておく
記者の個人的な意見に矮小することに成功
印象はとても悪かったが進退に関してはごまかせた
貴方はどう思うか?に対する最善手は、
「分からない貴方に判断して欲しい」だろうか?
▲記者 会長に向いてないとの声があるが
△森 貴方はどう思うか?
▲記者 分からない。貴方に判断して欲しい
△森 定石)直接その声を聞いていないので答えられない
強手)貴方に分からないことを聞かないでください
受け筋)信頼回復に努める
紛れ筋)①誤解を与えたことを詫びる(何の誤解かはごまかす)
②だから撤回して謝罪してるじゃないですか!(逆ギレ)
いったいどんな切り返しを用意していたのか気になるところ。
森喜朗氏の発言問題で観察できたこと。
誰かがこんなこと言ってましたと引用して、対する持論を展開する話法は、両論併記で多様性に配慮しているようでも引用の体でディスるのが煤けてる場合は叩かれること。
もしくは意見Aはダメで私はBと言っても話方が下手で聞き手がバカだと私が意見Aとされること
引用しぐさはズルいんよう
なお、日刊スポーツ記事 [2021年2月4日17時14分]から森氏の謝罪会見全文を見ると、
発言の真意を下記のとおり説明している。
-女性が多いと時間が長くなるのは誤解と表現したが、これは誤った認識ということか。
森会長 そういう風に聞いておるんです。去年から、一連のガバナンス(コード)に基づいて各協会や連盟はみなさん人事に非常に苦労しておられたようです。私は昔は全体を統括する体協、いまのスポーツ協会の会長をしていましたから、団体の皆さんとも親しくしております。その皆さんたちは相談にも来られます。そのときに、なかなか大変なんですということでした。特に山下さんのときは、JOCの理事会の理事を削って女性の枠を増やさなければならないということで大変苦労したという話しをしておられて、理事のなかでも反対があったりして大変なのをここまでこぎつけましたという、苦労話を聞いたから
-そうすると各競技団体から、女性が多いと会が長いという話が上がっているということか。
森会長 そういう話はよく聞きます
-それは例えばどんな競技か。
森会長 それは言えません
-データなど根拠のある発言ではなかったと受け止めたが。
森会長 僕はそういうことを言う人がどういう根拠でおっしゃったか分からないが、自分たちが女性の理事をたくさん選んだけれど、結果としていろんなことがあったと、そんな話を私が聞いたことを思い出して言った。山下さんにはそういうことで今後苦労されますよということを申し上げた
引用と森氏の中の意見の一致がみられた。引用元の意見に軽率に飛びつき、性別を問わず公正公平な人物評価がなされているかどうかの問題認識に欠けている。
五輪の理念にある多様性を尊重するならば、話が長いという現場からの報告を、新たな視点やセンスからたくさんの意見を頂戴していると良い意味にとらえて紹介できたはずだった。それを会議で苦労しますよとの助言の根拠にしてしまった。
よってこの件に関しては、上記Iの理の論法は採用できないことを補足します。